*深海の底で。~もうひとつの人魚姫~*
*真珠の涙*
「っつ!! クライド……クライド。
ごめんなさい。ごめんなさい。
貴方を傷つけるつもりはなかったのに……」
案の定、フランは自責の念を抱いていた。
「フラン、自分を責めずともいい。俺を助けるためにしたことだ」
あの時、フランのことで頭に血が上っていた。
奴らの息の根を止めたその後、俺の身がどうなるのかということを考えてさえいなかった。
フランがいてくれたからこそ、人間を殺さずにすんだ。
こうして、罰せられることなく生きていられる。
感謝こそすれ、フランを責めるなど誰ができるだろうか。
そういう気持ちを込めて、フランの目尻に溜まる涙を親指で拭ってやる。
すると、フランはふたたび口をひらいた。
「わたし、私は……貴方のことが……好き……なのに……。
サメから助けてくれたクライドに一目惚れして……クライドに近づきたくて、やっと同じ大人になれたのに、それでも子供扱いされて……。
イラってしたら、後先考えずに人間の世界に行って、捕まって……。
その結果、大好きなクライドを傷つけてしまった……ごめんなさい。ごめんなさいっ!」