*深海の底で。~もうひとつの人魚姫~*
――そう。
フランは3ヶ月前、この深海に迷い込み、サメに襲われていた。
危うく殺されるところに出くわした俺は、サメを撃退してやった。
それが、そもそもの発端だ。
それからというもの、なぜか俺はフランにつきまとわれ、滅多にやって来ない、この深海で人魚を頻繁に見ることとなった。
危ないから来るなと何度そう言ったことか。
だが、そうはいっても好奇心旺盛な彼女はけっして首を縦に振らず、こして毎日のようにここへやって来る。
「襲われなかったもん。大丈夫だもん。それに、私に何かあったら、きっとクライドは助けてくれるもん……」
「フラン……。
俺は汚れた者だ。お前のように美しくもない。皆もそう言っているだろう? 俺と会うなと……」
頬をふくらませて拗ねるその姿はとても愛らしい。
俺でもそう思う。
だからこそ、ここには来ない方がいい。