華火(もらいび、おくりび)【BL】
おくり火
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一年前の今日。
同じように花火大会があった。私は彼に「どうしても」と言われて浴衣を着て彼と一緒に花火大会を見に行った。
正直、男同士二人で観に行くのもどうかと思われたが、相手は曲りなりにも社長だ?業務命令には逆らえない。これも仕事の一貫だと割り切れば楽だった。
或は気軽に友人同士覗いてみた―――理由なんてどっちだっていい。
だがしかし、その考えが甘かったのを知ったのは数時間後―
どこを見渡しても人、人、人の波。
そして空の色もめまぐるしく変わる。
赤、青、黄、ピンクやオレンジ―――
空に咲きほこる大輪の華。
「きれいだねー」
方々でそんな声が聞こえたが、私はゆっくり花火を鑑賞する間もなく、人の波に押し流されないようしっかりと両脚で立つのが精一杯。
慣れない下駄の足はこのとき限界を迎えていたように思える。
鼻緒擦れでひりひりと焼け付くようにそこが痛い。
少し休むことを提案しようと―――すぐ隣を見やったが、すぐ隣で花火を鑑賞していたはずの彼の姿が突然消えていた。
どこへ―――……?
「ちょっと、すみません!」
人の群れをかき分けながら私は走り出した。
突然の消失感。
真奈美のときを思い出す。
それは予期せぬときに突然やってくるのだ―――
私の手の中を――――簡単にすり抜けて、遠く―――…うんと遠くへ――行ってしまう。
私は走った。
彼の姿を探しに。
走って
走って
走って―――
プチッ
突然何かの切れる音がした。