憂鬱なソネット
あたしはぷっと笑って言う。







「じゃ、あんた、要するにニート?


無収入のくせに、よくもまぁ、お見合いなんか来れたよね。


てか、お見合いに行かせるあんたの父親もすごいよ」







すると寅吉が、うーん、と首を傾げる。







「べつに、無収入ってわけじゃないんだけど」






「へっ?」







じゃあ、旅人で稼いでるとでも?




あ、旅先でバイトしてるとか??






あたしの疑問を感じとったらしく、寅吉が答えてくれた。







「俺、いろんなとこ旅して、そこで見たり聞いたりしたこと、本にしてるんだ。


いちおう、その収入で生活してるんだよ」






「はぁっ!?」







またもや爆弾発言!!







「………あのねぇ、そういうの、世間では『作家』って言うんだよ!!」







あたしが親切にも教えてあげると、寅吉は「そうなのかなー」とのんびり呟いた。






「でも俺、小説とか書いてるわけじゃないし。


作家とか名乗るの、申し訳ないというか。


で、旅に関する本だけ書いてるから、肩書きは旅人ってことにしてるんだけど」







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