憂鬱なソネット
憂鬱なエチュード
第二部 再会編
【憂鬱なエチュード】
*
「ーーーめさん!」
仕事帰りの道。
突然、誰かから名前を呼ばれた気がして、あたしは銀杏並木の真ん中で立ち止まった。
空耳かな、と思いながら振り返ると。
「あやめさーん! こっち!」
「えっ、あんた………」
予想だにしなかった男の登場に、あたしは目を見張る。
それを知ってか知らずか、男は心底うれしそうな顔で、
「久しぶり」
と笑った。
あたしは思わず、
「久しぶりって………なんなの今更!?」
と怒鳴ってしまった。
男は「ん?」と首を傾げてから、
「会えてよかった!」
と、こともなげに言う。
顔面を覆い隠すボサボサの長髪に無精髭、ボロボロに擦り切れた穴だらけの黒ずんだ服。
山男かと見まごう容姿でにこにこと手を振ってくる男を、あたしは呆然と見つめた。
【憂鬱なエチュード】
*
「ーーーめさん!」
仕事帰りの道。
突然、誰かから名前を呼ばれた気がして、あたしは銀杏並木の真ん中で立ち止まった。
空耳かな、と思いながら振り返ると。
「あやめさーん! こっち!」
「えっ、あんた………」
予想だにしなかった男の登場に、あたしは目を見張る。
それを知ってか知らずか、男は心底うれしそうな顔で、
「久しぶり」
と笑った。
あたしは思わず、
「久しぶりって………なんなの今更!?」
と怒鳴ってしまった。
男は「ん?」と首を傾げてから、
「会えてよかった!」
と、こともなげに言う。
顔面を覆い隠すボサボサの長髪に無精髭、ボロボロに擦り切れた穴だらけの黒ずんだ服。
山男かと見まごう容姿でにこにこと手を振ってくる男を、あたしは呆然と見つめた。