憂鬱なソネット
呆れて物も言えない、とはこのことか。




どんだけズレてんの、この男は!?



公衆電話探してる間に、仲立人づてであたしに連絡してもらえばよかったのに!




…………でも、あたしは怒りをぶつける矛先を見失ってしまった。




だって、寅吉は。



あたしにもう一度会うために、公衆電話を求めて、三ヶ月も東京中を放浪してくれたのだ。



こんなにボロボロのモサモサになるまで。




――そんなの、嬉しくなっちゃうじゃん。




気がつくと、あたしはふふっと笑みを洩らしていた。





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