憂鬱なソネット
「うぅっ、重いよバカ!」





あたしは腕で寅吉の身体を押しのけようとする。



ほんとは、重いんじゃなくて、照れくさかっただけなんだけど。





「わわ、ごめん、どこも痛くない!?」





寅吉があたしに覆い被さるようにして顔を覗きこみ、心配そうに頬に手を当ててくる。




その顔があんまり慌てているので、あたしはおかしくなって笑った。





「…………痛くないよ」




「そっか、よかったぁ………」





寅吉は心底ほっとしたようにへにゃりと笑う。




そして、あたしの隣にごろんと寝転がった。






黄金色の絨毯に、二人並んで横になり、空を見上げる。





鮮やかなレモンイエローの銀杏並木の向こうに、雲ひとつない秋晴れの青空が広がっている。






「きれいな色………」






無意識に呟くと、寅吉が






「そうだね」






と微笑んだ。






「でも、もうすぐ散っちゃうかな」




「じゃ、春になったら桜を見に行こう」




「それ、いいね」






あたしと寅吉は顔を見合わせて、くすくすと笑った。





あぁ、春が待ち遠しいな―――。






* * *


第二部 再会編 完




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