憂鬱なソネット
とりあえず、荷物を置いてこよう。




あたしは足取りも重く階段を上り、自分の部屋に入った。






「………あー、つかれた………」






バッグを置いて、一休みしようとベッドに腰かけたところで、テーブルの上に置いてある箱が目に入った。





お菓子の空き箱の蓋に、黄色い銀杏の葉が貼りつけてある。





あたしは無意識のうちに手を伸ばし、蓋をとってぼんやりと眺めた。






この銀杏の葉は、あたしの変人な恋人ーーー寅吉からもらったもの。




唯一のプレゼント。






あたしたちはお見合いで出会い、三ヶ月後に銀杏並木の下で偶然再会した。




そのときに、寅吉がにこにこしながら渡してくれたものだ。





確かに、とても形がきれいで、色も鮮やかな黄色。





もらったときは、寅吉らしいな、って微笑ましく思って、なんとなくとっておいたのだ。






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