憂鬱なソネット
あたしは蓋をテーブルの上に置き、今度は箱を膝の上に載せた。





中に入っているのは、大量の封筒。




真っ白な封筒に、几帳面な字で、『藤沢あやめ様』と書いてある。





寅吉からもらった手紙だ。




全部、この中に入れてある。






電気製品を全く使わないという、ほとんど原始人な生活をしている寅吉は、もちろんケータイもパソコンも電話も持っていない。




だから、連絡する手段は手紙しかないのだ。





つまりあたしたちは、この一ヶ月と半月ほどの間、文通をしているわけだ。






この21世紀に、二十代の男女が、文通って………笑えるよ、ほんと。





でも、いちおう旅人兼作家をしている寅吉は、とても筆まめで、二日と空けずに手紙が送られてきていた。





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