この思いを迷宮に捧ぐ
千砂はそう告げながら、今自分がその熱病で倒れたなら、どうなるだろうと想像してみる。


しばらくの間は、いないなりに常識的な内容で、色んなことが決められ、実行されて行くだろう。

だけど、長期に渡ったなら、未だに残る危険因子が活動を始めるに違いない。


大体、千砂を国王に推す声には、体が健康で丈夫であることを理由とするものが少なくなかった。

それは、千砂に目立った長所も短所もないせいでもあったが、美砂との比較で、はっきりと千砂の方が優れていると言えるからでもあった。


そんな私がこのタイミングで、「恋の病」などと呼ばれる熱病にかかったなら、反対派の勢力は一層拡大するに違いない。

そうはさせないという気持ちとは別に、いっそのこと、その熱病で倒れた方が楽なのではないかと思う。

不治であったり、死に至る病だと言う報告はないが、長く熱でうなされて、その間に国王の座を失った方が、自分にとっても国にとってもいいのかもしれない。
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