この思いを迷宮に捧ぐ
「大臣の汚職、どこまで追求できそう?」


「え?」

千砂がぼかして言ったにも関わらず、男が的確に言葉を選んだ。

「どいつが根源か、知りたいんだ」

その表情が切実で、千砂はわからないふりは通用しないことを悟る。

「どうして?」

男はしばらく沈黙した後、意を決して告げた。

「座長に就任するときに、要求された賄賂を出さなかったら、妹を連れ去られた」

「なんですって?」

「妹は、帰っては来たよ。心身ともに、取り返しがつかないほど傷ついて」

千砂にはもう、何といっていいのかわからなかった。

「告発したいが、どいつが黒幕か、まだわからないんだ」

やっぱり、この国は腐った船だ。

千砂は、激しい頭痛の中にめまいを覚えた。

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