この思いを迷宮に捧ぐ
懸案7

女王の婿を募る件

「迷宮の主、登場」


「は?」

千砂は思わずそう呟いていた。


「あんたが作ったの?あの巨大迷路。秘境っていうより迷宮だな、ここは」

暢気にそう言い捨てて、きょろきょろしている男は、その甘い顔立ちが残念なくらい底の浅い人物らしい。

「人を寄せ付けたくない、って丸わかり」

ちらっと千砂に視線を投げて寄越しただけで、後は宮殿に至るまでのまさに迷路のように続く壁を興味深そうに振り返っているばかりだ。



嫌な男だ。

宮殿までの道は、古の姿を生かしているものの、確かに千砂が多少複雑に変えたところがある。

危険だと感じた死角がある地点では、さらに死角を増やし、身を隠すスペースを作ったりした。

まさにその地点で、男はその台詞を吐いたのだ。



偶然に思いついただけなのか、冷静に壁の新しさを分析できたのか。

千砂は、こちらを見られていないのをいいことに、彼を観察する。
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