この思いを迷宮に捧ぐ
青英に似ていないこともないが、彼より背が高くて華奢な印象だ。



そう。この男が、会議で選ばれた千砂の見合い相手だ。

これで5人目。

任せると言ったけれど、大臣たちは本当に国益ばかりを優先しているわけね、と千砂はため息をついた。

相手の気質だとか、能力だとか、個人を評価したのだと感じる相手が一人も見当たらない。もちろん、千砂との相性などは論外だろう。


高貴な血筋であったり、裕福だったり、バックボーンが魅力的な相手ばかりが選ばれている。


確かに、水に恵まれない土の国にとっては、水の国との関係は最重要案件のひとつだ。
そこは、美砂が青英に嫁いだことで関係の強化になったはずだったが、その姉も亡くなってしまった。

忘れ形見の水都の存在もあり、青英も美砂が死んだからと言って土の国を切り捨てるようなことはなさそうだが、大臣たちの心の中では不安が増しているのが実際のところなのだろう。

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