この思いを迷宮に捧ぐ
相変わらず千砂には何の興味を示さず、唐突に立ち止まった男は、壁に埋もれた石のかけらをそっと撫でている。
彼の名は翠。
32歳と若いが、青英の叔父に当たるらしい。国王の義理の弟だとか。
兄弟にしては随分歳が離れていると思うものの、千砂にとっては他国の王族の内情はどうでもいい。
表面的な理由として、国にとって利益となる人物と結婚しなければならない。
そして、裏側の理由としては、反対派の視線を晁登や彩菜からそらさなければならない。
その二つが、千砂にとっては最大の条件だ。それをどちらも満たすのが、他国の王族。とりわけ水の国の王族ならば、言うことなしだ。
反対派の視線が千砂の夫に向かうとなれば、夫となる人物も毒物に強くなければならない。簡単に死なれては、また国が揺れることになる。
きっと、王族に生まれた人間ならば、何らかの対処はできるだろう。
彼の名は翠。
32歳と若いが、青英の叔父に当たるらしい。国王の義理の弟だとか。
兄弟にしては随分歳が離れていると思うものの、千砂にとっては他国の王族の内情はどうでもいい。
表面的な理由として、国にとって利益となる人物と結婚しなければならない。
そして、裏側の理由としては、反対派の視線を晁登や彩菜からそらさなければならない。
その二つが、千砂にとっては最大の条件だ。それをどちらも満たすのが、他国の王族。とりわけ水の国の王族ならば、言うことなしだ。
反対派の視線が千砂の夫に向かうとなれば、夫となる人物も毒物に強くなければならない。簡単に死なれては、また国が揺れることになる。
きっと、王族に生まれた人間ならば、何らかの対処はできるだろう。