この思いを迷宮に捧ぐ
「なら、顔だけは瓜二つなのだから、私で我慢なさったら?姉は死にました」

今の私にとっては、これ以上ない好条件。この男なら、私が恋することもなければ、私に甘ったるい台詞を囁いたりすることもない。


「…ふうん。変な女」

不思議そうにしげしげと翠は、千砂を眺めた。

「まあ、あんたが一番彼女に似てることは確かだな」

それは、当面、千砂で我慢できると言う意味だろうか。



「ところで、この国の情勢はご存知?」

半端な覚悟なら、用はないのだ。どこまでこちらの状況を把握しているのか、確認するために、千砂は言葉を選ぶ。

「国政が汚職まみれで、クイーンも常に狙われてるってこと?」

案の定で何の遠慮もない返答に、坡留がイライラしながら不自然な咳払いをする。

「そう。だから、私に近い立場にいれば、あなたの命も危険。その上、国は貧しくて、王族と言っても贅沢はご法度」

ここまで言えば、これまでの見合いは全て断られた。何のメリットもなく、あるのはデメリットだけだと誰にだってわかるのだから。


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