この思いを迷宮に捧ぐ
せめて、その痛みが報われるということを、伝えたかったのに。

坡留の心はやはり晴れない。


少しずつ強く、そして孤独になって行くこの幼馴染を、少しでも楽にしてあげたいのに。

彼女のオンを大切にすれば、オフが犠牲になる。恋愛にそういう相手を選んだせいだと言えばそれまでだが、異性に心を開かない彼女が好きになったのだから、どうにかしてあげたかった。

静かな表情で、ぼんやりと遠くを見やる千砂が、まるで人形のように見えて、坡留はぶるりと身を震わせた。



このままではいけないと、強い危機感を覚えるのに、彼女はあの無礼な男との婚礼を迎えてしまう。

大丈夫だろうか。

本当に、今度こそ、人形のように心を失ってしまうんじゃないだろうか。

坡留は、そんな不安にさいなまれていた。




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