この思いを迷宮に捧ぐ
採掘場での再会以来、会うことのなかった岳人からだった。
有罪を言い渡され、大臣の座を終われた男がどうなったのか、考えないようにしていた。
だけど、この手紙を読んだ後の深い安堵から、秘かな気掛かりだったことが知れる。
そして、岳人なりに、長年思い悩み、自分を思い続けていてくれたことも。
初めて恋した人も、初めて気持ちが通じ合った人も、皆いなくなった。
やっぱり私は一人だ。
その自覚は、強い孤独感とともに、意外なほどの安堵感を千砂にもたらした。
これでいい。
誰も傷つけず、誰にも傷つけられない。
私は、一人でいるのがいいのだ。