この思いを迷宮に捧ぐ

懸案９

女王の婚礼に関する件

千砂は事前の打ち合わせやリハーサルも、多忙を言い訳に、全て行わないと言い置いていたが、その日は確実にやって来る。

やむなく、故郷である水の国の国境の町から、千砂の母が宮殿に呼び寄せられて、さまざまな手配を行っていた。

そして、とうとう、その日は勝手に千砂の元へ訪れた。


まさか。

千砂は騒々しい母親が手洗いに立った、一人の控室で、ぽつりと胸の中だけで呟いた。

まさか私が、結婚するなんて。

結婚などしないと固く決意していたのに、晁登を守るためだけに、その心情を翻してここにいる。

黄生は、国のためにも、私自身のためにも、結婚した方がいいというようなことを言っていた気がする。ふと、そのことを思い出した。

少なくとも、晁登と国のためにはなるかもしれない。

私自身にとっては、何の利点も見いだせないのだけれど。


ぼんやりしていたら、いつの間にか挙式の真っ最中だった。

「では、誓いのキスを」