この思いを迷宮に捧ぐ
それは、千砂が結婚までの段階の全てを放棄したにもかかわらず、翠からも何の要求がなかったためだ。
それだけでも、互いの気持ちが透けて見えるというものだ。
「補足する。仲がいいように見せてくれってことだ」
それは確かに、ちょっと難易度が上がる。
千砂が、これほど結婚にも、相手にも、無関心なのだから。
「…険悪な仲には見えないようにできると思います」
この大した利益もない結婚を受け入れてくれたのだから、そのくらいのことは仕方ないだろうと千砂も思う。
「じゃあ、契約成立ってことで」
そう言ってすっと手を取って、翠は千砂の手を腕に絡ませた。
ふと周りを見ると、もうすぐ義母のテーブルという位置だったから、どこまでマザコンなんだと思う。
そう言えば、水の国から移り住むにあたって、翠から唯一出された要望が、身寄りのない母親を伴いたいということだった。
他には、住む場所はおろか、部屋や調度品、自由になるお金の額など、一切指定も質問もなかったのだ。
それだけでも、互いの気持ちが透けて見えるというものだ。
「補足する。仲がいいように見せてくれってことだ」
それは確かに、ちょっと難易度が上がる。
千砂が、これほど結婚にも、相手にも、無関心なのだから。
「…険悪な仲には見えないようにできると思います」
この大した利益もない結婚を受け入れてくれたのだから、そのくらいのことは仕方ないだろうと千砂も思う。
「じゃあ、契約成立ってことで」
そう言ってすっと手を取って、翠は千砂の手を腕に絡ませた。
ふと周りを見ると、もうすぐ義母のテーブルという位置だったから、どこまでマザコンなんだと思う。
そう言えば、水の国から移り住むにあたって、翠から唯一出された要望が、身寄りのない母親を伴いたいということだった。
他には、住む場所はおろか、部屋や調度品、自由になるお金の額など、一切指定も質問もなかったのだ。