この思いを迷宮に捧ぐ
命を狙われる状況で育ったくせに、この図太い神経を持っていて、それでいて、気まぐれに千砂の人を寄せ付けまいとしている領域に踏み込んでくる。

大体、危機感を持たせたり、自覚を促すためだとしたって、本当に首を絞める?ありえない。

千砂は心の中であれこれ叫んでみるものの、目の前ですやすやと眠る翠にぶつけることもできず、結局はその寝顔に沈黙するしかない。

同じ寝室で眠るなんて冗談じゃないと思っていたけれど、相手の翠がこれほど無防備に寝入ったことで、千砂もわずかに緊張が解けた。

子どもをもうけることは契約外であると、もう一度言い聞かせなければならないような場面にならずに済んだのだから。


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