この思いを迷宮に捧ぐ
懸案11
渇水に関する件
悪いことは、不思議と重なる。
「限界です。水の国からの水路さえ、一部で干上がり始めています」
治水大臣が切羽詰まった声で報告する。
千砂は、数十年に一度と言われる、記録的な干ばつに見舞われていることを認めざるを得なかった。
一時期よりは落ち着いたものの、いまだ腐敗を排除し切れない国政に、この災害は大打撃だ。
長い間、日中は高温が続いており、雨も降らない。
環境大臣によれば、観測するに足りる雨が降ったのは、もう一月以上も前なのだと言う。
「陸路で、人手を利用した給水を。水の国だけでなく、火の国にも援助を求めます」
「かなりの資金が必要です。長くとも、1週間ほどの予算しか我が国にはございませんぞ」
「承知しています。しかし、国民が死に絶えては元も子もないでしょう。国債を発行してでも水を確保するのです」
千砂も、国民が生き延びた後には、彼らが生活していくための援助の資金が必要であることはわかっている。