この思いを迷宮に捧ぐ
はっとして自身を見下ろし、千砂は一瞬真っ赤になった。

暑い昼間でも、女っぽさを隠すように、袖や裾の長い服を着ていたのが裏目に出たのだ。

暑さを楽にするために、薄い生地を選んでいた。濡れてしまったら、そんな生地は肌にくっついて体の線がはっきりわかるし、所々は肌色が透けてさえいる。

恐る恐る周囲を見渡して、千砂は次第に青ざめる。

興味津々で見ている者、ぽかんとしている者、顔を赤らめている者、とにかくこのみっともない姿を見られたことだけは間違いなかった。

「あなたがついていながら、なんてことですか」

たどり着いた坡留が、ストールで千砂の体を包みながらも翠を睨むから、ますます千砂は後悔する。

あんなふうに、我を忘れてはしゃぐなんて。

「なんてことって、何?坡留チャン。俺はヘーカの好感度を上げたんだけど」

ちゃん付けで呼ばれた坡留が、むっとして口を開こうとしたそのとき。



「陛下万歳!」

誰かが声を上げた。

「陛下のお力だ」
「そうだ」
「古からの王家の力に違いない」

あちこちから、さざめきのように、声が上がり始めた。

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