この思いを迷宮に捧ぐ
翠の声はやけに平坦で、女の子がもう声も出せずに、頷くのが精一杯らしいのが見てとれて、千砂はハラハラし始める。
「で?」
読み終えて、彼女を見下す翠の目は、千砂の胸がズキリと音を立てるくらいに冷めていた。
「え...?」
「だから何?不倫してくれってこと?」
明らかに冷淡な声に、千砂は自分の感情も凍るような気がした。
「い、いえ、そういうつもりでは」
純粋な好意を伝えたかったのであろう娘は、もう泣きそうな顔になっていた。