この思いを迷宮に捧ぐ


「機嫌悪いな。いつもだけど、いつも以上に」

あんな言葉を吐いた直後の翠に、会いたくなかったと、千砂は彼から顔を背けたままで思う。

しかし、残念ながら、翠は千砂の部屋に自由に立ち入れる唯一の存在だ。


「急ぎの仕事があるから、邪魔しないで」

余計なことを言いたくないのもあって、千砂は翠を遠ざけたい。

「手伝ってやるよ」

「ば」


日頃は書類仕事なんて手伝ったこともないくせに。
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