この思いを迷宮に捧ぐ
馬鹿なこと言わないで、と言うことができずに、千砂はペンを落とす羽目になる。
翠が手首を掴んで、素早くキスをしたからだ。
「やめて!」
突き飛ばした手の甲で、千砂は思わず唇を拭ってしまった。
「機嫌が悪いって言うより、俺が嫌いって感じか」
ふっとおもしろそうに笑うから、本当に神経を疑う。
「今に始まったことじゃないけど、そこまでひどく嫌われたのは何で?」
何を考えてるんだかわからない素行だらけなのに、妙に鋭いのがまた厄介だった。