この思いを迷宮に捧ぐ
「大丈夫、どんな声あげようと、口は塞がないから安心してよ」
「何を言ってるの!?」
「まあ、それは冗談だとしても。ああ言っておけば、しばらくはあんたの子どもを期待して静かにしててくれるよ?」
千砂は翠の人の心理の把握ぶりに、呆気にとられることが時々ある。
「かもしれないけれど、」
「嘘も方便だから。彼らが一番嬉しい想像をしてるなら、しばらくはそれでよくね?」
「...」
千砂は喉まで「嘘はよくないわ」と出かかっていた台詞を飲み込んだ。