この思いを迷宮に捧ぐ
千砂の意識は長い間、反対勢力を警戒することに向けられていて、自分を支持する人間には鈍感だと、翠は思う。
身近な護衛や、同じ理想を持つ大臣、国民たちからは、もはや崇拝と言っていいくらいにあがめられていることに、本人だけが気付いていない。
だから、いくら夫としての地位を得ていても、翠に対してはどことなく冷たい視線を寄越す輩が少なくない。
あいつら、千砂を崇拝してるだけじゃない。
完全に独占したいんだ、俺に嫉妬してるんだろう、と翠は考えてげんなりした。あまりにぴったりな表現で。
面倒くさいな。
嫉妬とか、一番。