この思いを迷宮に捧ぐ

確か、典医は、千砂について、疲労が蓄積しているうえに風邪気味だと言っていたはずだから。

「寒い」

小さな声の答えが、凍えているように聞こえて、翠は思わず体を倒して千砂を囲ってやった。

「毛布は?」

寝相が悪くて、床に落ちているというわけでもなさそうだ。目の届く範囲には見当たらない。


「くるまれたら、抵抗できないの」

翠は、思わず、その冷えきった体を抱きしめていた。
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