この思いを迷宮に捧ぐ

翠にも、経験から得た身を守るための方法はあるけれど、千砂は女だ。
翠が想像できる以外に、危険なことがあるのだと気付いたら、放っておけなくなった。


「翠」

いつもは、「あなた」とその他大勢の人間のひとりのように呼んでいたくせに。

どくどくと活発に動く心臓に気がついて、翠は小さく舌打ちをする。

「千砂、」

仕方なく、その幼子のような名を呼び、困惑する。

「どうした?」
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