この思いを迷宮に捧ぐ

困惑したように揺れる千砂の瞳にも、翠は自分を止めることができない。

「ん、」
キスの合間に漏れるこの声を、前に聞いた男が存在する。

ふいに絶望的な気分になって、翠は呆然とした。


俺は、千砂のことが。


「どうしたの」

さすがに翠の異変に気がついた千砂は、今でははっきりと困惑の表情を浮かべていた。

「俺」

そこで、翠は言葉を飲み込んだ。
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