この思いを迷宮に捧ぐ

微かに上気し始めた頬と、すでに扇情的に濡れた唇に、翠はもうだめだと観念した。


俺、この女が好きだ。


その気持ちに任せて思い切り唇に吸い付いたら、生真面目に千砂が応えてみせたから、いよいよ歯止めがきかなくなった。

「す、い」

こんなときに名前を呼ぶな。甘い声で、まるで恋人みたいに。

「も、もう、...ん......やめ」

言いたいことはわかってる。もう審議官なんかいないんだろ。
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