この思いを迷宮に捧ぐ
「大丈夫よ」
痩せたかどうか定かではないが、体調に大きな変化はなく、千砂はそう答えた。
「そうね、元気そうではあるわね。顔色が良くなったわ」
にっこり、と音が出そうな笑みを浮かべる。
「休むでしょう?」
千砂の母の故郷は国境に近い。疲れているはずだと千砂は思う。
「そうね。少しだけ。夕食は皆さんとご一緒したいわ」
自分と対照的な母に自嘲気味な笑みが浮かぶ。
積極的に人と食事をしたいと思うことがない。義務で同席することばかりだ。