この思いを迷宮に捧ぐ
「いえ、私のことはどうでもいいの、あなたが私に対してそんな気持ちになるはずがな」
翠は、もう言葉で伝えることは諦めて、彼女の口に被さった。
千砂はさっきまで、翠が美砂への憧憬を引きずっているのだと思い込んでいた。
それによって、これまでの翠の突飛な提案や行動のほとんどの説明がついたからだ。
会った日に、姉と結婚したかったと、私の顔と結婚すると、翠は言ったはずだ。
だけど、こんなにも中身が違うのだと、翠だって今ではよくわかっていると言ったばかりなのに。