この思いを迷宮に捧ぐ
子どもをもうけることまでも、私が一見姉に似ていれば、抵抗のないことなのだろうか。
「あ、っ」
首筋を舌が伝う感触に、千砂は唐突に思考ルートを失った。
混濁して行く感覚の中、時折、翠は自分の姿に姉を見ているのだと言い聞かせてみる。
そして、結局は王位継承者を作ることが、国を安定させるためには大事な仕事なのだと、さらに言い聞かせてみる。
それはそれで正論には違いないのに、気持ちが落ち着く一方で、なんだか自分が空っぽな人形になっていくように思えて、千砂は切なくなった。