この思いを迷宮に捧ぐ
少しためらった後に、千砂は首を横に振る。
本当に嫌なのは、翠でもなく、一連の行為でもなく、欲張りになっていく自分だと気付いたから。
望み通りではなかったけれど、今では夫がいて、子どもができる可能性も出てきたのだ。何を空しく感じる必要があるのか、自分でもわからない。
「俺は、千砂に俺の子どもができたら嬉しいよ」
翠にも、千砂の気持ちが自分に向いていない以上、満足感はない。
かと言って、自分の気持ちの何から千砂に伝えればいいのかも、見当がつかない。