この思いを迷宮に捧ぐ

不思議にその言葉は、千砂の空虚だった胸を少し満たした。こんな状態で子を授かることは、王族に限らず、ままあることなのではないか。

国民の間でも、見合いや親の決めた結婚は少なくないと聞く。
子はかすがいとも言う。

子育てをする内に、夫婦の仲が深まり、信頼し合うこともあるのだろう。


だけど、まだ、私にはその資格がないような気がしてならない。


千砂はそう思っていたから、変わらないサイクルで月経が巡ってきたときには密かに安堵した。

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