この思いを迷宮に捧ぐ
今にも駆けつけたそうな様子は、自分よりいくらか若いはずなのに、どう見ても母親の顔で、千砂は目を見張るばかりだ。それもそも、朱理にとって、王子は実の息子ですらない。
「手がかかるでしょう。それでも可愛いですか?」
千砂が素直な疑問を口にすると、朱理はふっと千砂を振り返った。
「美砂と青英にそっくりなの。私の大好きな人たちの子だもの。泣いてても怒ってても可愛い」
にっこりと笑うその顔にも言葉にも、何一つ嘘や世辞が見いだせず、千砂は胸を打たれる。
「あなたがそう思って下さるから、姉も安心して眠れるのでしょうね」