この思いを迷宮に捧ぐ
「取り消すなら今の内です」
振り返った使者たちは、まだ半笑いだった。
「その女性が、私の夫の生母であり、夫は水の国の王族の一員であることもよくよくご存じな様子」
瞬きもせずに彼らの顔を凝視していると、ようやく千砂が誰なのか気付いたらしい。
片方の男が「へ、陛下」と呟いた。
にこりともせずに、千砂ははい、と応じて続ける。
「そう、私は土の国の現国王。その夫の縁者を侮辱するのは、私に弓を引くも同じことになりますね」
二人の男は顔をひきつらせているが、全く気にならない。