この思いを迷宮に捧ぐ

「坡留さんも来ますか?」
「え、ええ。もちろん。私は陛下の秘書ですから」
「助かります。僕、喧嘩弱いんで」
「・・・・・・」

赤くなって黙り込んだ坡留と、にこにこしている風汰を見比べて、思わず千砂は吹き出してしまう。

坡留が護衛を兼ねているのは、千砂が彼女一人しか連れていないことから明らかではあるが、それを頼りにする他国の外交官は初めてだ。

からかわれたり、絡まれたりすることもあれば、勝負を挑まれることもよくあって、坡留はそういう輩にはあまり動じることはない。
風汰の言葉は、言い方によっては意地悪に聞こえそうな台詞なのに、坡留に悪い感情を持っていないことはちゃんと伝わる。
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