この思いを迷宮に捧ぐ
二人は幼馴染みだと聞いた。朱里は長い間隔離されていたのだから、そんな生活の中での貴重な友人は、親同様の大きな影響を与えても不思議ではない。
でも、彼は、朱里と結ばれることはない。
千砂は、神の声を思い出す。
あの声をきっかけに、朱里は青英のところへ行くことになり、二人は結婚を強いられたが、後に互いを思い合う関係になっている。
私が考えても仕方がないことだ。
思ったり思われたり、思い合ったり、私には好きだとか嫌いだとかいう感覚がよくわからなくなっているのかもしれない・・・。
ふいに「俺を好きになって」というあの声が耳によみがえって、千砂は頭を横に振った。