この思いを迷宮に捧ぐ
//////////////////

「つまりは、外務大臣が、外国公演を行う劇団に賄賂を要求し続けていたということですね」

千砂は、そう一言でまとめられる事実を掴むために、晁登がどれほど骨を折ったことかと思いやられた。

「そうです。かなり汚い手を使っていたらしく、誰が首謀者かわからない状態で、煌も長年苦しめられた様子です」

「演劇は、我が国の重要な産業と言えるでしょう。それを阻害したのですから、彼を厳罰に処してください」


千砂がそう告げて、話を切り上げようとすると、大臣たちは口をつぐんだ。


「陛下、証拠がないのです」

「…ひとつも?」

「はい。ひとつも出ません」


「では、罪人は、どのように申し開きを?」

「しないのです」

「…全く?」

「はい。何一つ、尋問に答えません」


はあ。

堪えきれずにため息が零れて、千砂は強い疲労を初めて感じた。


頭が痛い。



< 52 / 457 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop