この思いを迷宮に捧ぐ
「お気を付けて」
「お前も」
千砂が、ただ一人きりで、採掘場の中へ姿を消す。
あかり一つないその先の道を、どうやって彼女が奥へ進むのかはわからないが、明るくしないでくれと頼まれている。
それならば、私はここで、見張りをするだけだ。坡留は気持ちを引き締めて、暗闇の中で目を凝らす。
採掘場と呼んではいるものの、ここは宮殿内である。そうはいっても、国政の中枢に関わる大臣クラスにも信用ができない情勢であることから、坡留はここを危険な場所の一つだと考えている。
ただの勘といえば勘だけど、そういうものは大切にするようにと、警護の師匠に教わった。
いつも、緊張しているせいか、暗いせいか、千砂が戻ってきた時には、長い長い時間が過ぎてしまったような気がする。
坡留は、闇でも白く輝くように見える千砂の金髪を見た瞬間、駆け寄っていた。
「陛下!」
様子がおかしいと思ったら、案の定、千砂は坡留にしがみつく様にして気を失った。
その手には、硬く輝く石がしっかりと握り締められていた。