秘密実験【完全版】
高校生カップルを監禁し始めてから、真の様子に少し変化が訪れた。
もともと無口な彼だが、さらに口数が少なくなりピリピリ神経を尖らせている。
ちょっとしたことで苛立ちを露わにしたり、声を荒げるようにもなった。
監禁した二人を映すモニター画面を食い入るように見つめながら、思案に耽ることもしばしば……。
彼女──木南杏奈により興味を示しているように見えた。
何でよ? 真……。
私だけを見て!
だが、未来の心の叫びは届かない。
耳を傾けようともしてくれない彼に焦燥感が募る。
怒りと嫉妬の矛先は、もちろん木南杏奈に向けられた。
おもに食事と着替えの担当を任されていた未来は、杏奈に対して子供じみた嫌がらせを度々行った。
怒鳴りつけたり、わざとマズい食べ物を食べさせたり……。
最初はスッキリした。
しかし、同時に虚無感が込み上げる。
真があの女を庇うからちっとも面白くない。
この別荘に来てからと言うもの、抱いてくれなくなった。
そればかりじゃない。
まともに会話をしてくれないし、顔すら見てもらえない。
未来はどうしようもなく寂しくて、取り残された迷子のような不安な気持ちになった。
「ねぇ~、まこ……ンンッ!」
甘ったるい声で話しかけようとすると、突然彼が片手で首を絞めてきた。
少し息苦しいけど、それでもいい。
愛する人に触れてもらえるんだから、私は幸せ者だ──。
「痛……ッ」
左腕にチクリと刺すような痛みが走り、未来は顔をしかめた。
注射器?
彼の手には、なぜか小さな注射器が握られていた。
瞬間的にふわりと甘い目眩がして、未来は彼の胸元に倒れ込んだ。
心地の良い感触に包まれながら、後戻り出来ない禁断の扉を叩こうとする。
「この薬で、お前の病気を治してやる」
耳元で優しく囁く声に、未来は返事も忘れて泣き崩れた。
ねぇ、真……。
病気が治ったらあたしを愛してくれる?