秘密実験【完全版】
「悠介! ねぇ、聞こえる? 杏奈だよ」
杏奈はテレビにかじりつく勢いで、画面の中の悠介に向かって必死に呼びかけた。
すると、画面が大きくぶれてピエロ男の顔がアップになった。
「……っ!」
はっと息を呑み、反射的に身を引く。
画面越しに見るピエロはさらに不気味だった。
『そんなに怖がらなくてもいいだろ? ククッ……その怯えた顔、見てるだけでコーフンするぜ!』
ピエロ男のガラガラ声がスピーカーから大音量で聞こえてくるなり、杏奈は耳を塞ぎたい衝動に駆られた。
どうやら向こうにもテレビかモニター画面があり、こちらの部屋の映像を見ているようだ。
「悠介は無事なのっ……? 声を聞かせて!」
ピクリともせずに壁にもたれている悠介を見ながら、杏奈は微かに震える声で言った。
まさか、死んでないよね……?
不安で居ても立ってもいられない。
すると、ピエロ男が無言で後ろに下がり──
『おらぁッ!! 起きろ、小僧』
ドスの利いた声を発しながら、悠介の髪を鷲掴みにして、無理やり顔を上げさせたのである。
その瞬間、杏奈は喉まで出かけた悲鳴を飲み込んだ。
「……っ、悠介!? ひどい……。悠介に何をしたのッ?」
怒りと恐怖を声に滲ませながら、ピエロを睨みつける。
彼の綺麗だった顔は、痛々しい痣と腫れによって見る影もなくなっていた。
きっと、何度も殴ったりしたのだろう。