秘密実験【完全版】



『まァ、とにかく! 俺は不細工オヤジじゃねぇってことだ。分かったか? 今度ふざけたこと抜かしたら犯すからな!』


 ピエロ男が仕切り直しとばかりに言い放ち、カメラに向かって中指を立てる。


 ただの脅しならいいが、この男なら本当にやりかねない。


 ……口は災いの元、ね。


 杏奈は画面から目を逸らして、聞こえないようにため息をついた。



『……遠藤悠介』


 ふいに、ピエロ男が低い声を発した。


 フルネームで呼ばれた悠介は、どことなく緊張の面持ちで男を見上げた。


 しかし、その目つきには反抗的な色が浮かんでいる。



『お前には、あらゆる方法で身体的苦痛が与えられる』


『……は? どういう意──、ぐふッ……!!』


 言い終わらないうちに、悠介は前のめりに倒れ込んだ。


 男の蹴りがみぞおちに炸裂したのである。



『黙って聞けや、ボケ! 俺様が麗しい声で喋ってんだからよ。……で、手足の拘束具及び猿ぐつわを、昼夜問わず取り付けていてもらう』


 ピエロ男は意味ありげにニヤリと笑うと、一旦フレームから外れた。


 そしてすぐに、怪しげな器具のようなものを手に戻ってきた。



「悠介っ……」


 杏奈は口の中の乾きを感じながら、不安げな声で彼の名前を呼んだ。


 革ベルトで手足を拘束され、猿ぐつわを装着された悠介は、苦しそうに不明瞭な呻き声を漏らしている。


 『うるせえ!』とピエロ男が一喝とともに、悠介をまたしても蹴り飛ばした。


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