秘密実験【完全版】
第一章
明るく広々とした店内は、学生のグループや若いカップルたちの異様な熱気に包まれていた。
夏休み目前ということもあり、皆浮き足立っているのだろう。
旅行の計画を立てたり、遊びに行く約束をしたり……。
それぞれの会話が雑音となって耳をかすめていく。
「杏は夏休み、どっかに行く予定ある?」
悠介がそう言って、生気に満ちた大きな目を杏奈の顔に向けてきた。
ファストフード店に入ると決まって注文するコーラを片手に、好奇心いっぱいの様子で夏休みの予定を訊く。
そんな彼氏に愛おしさを覚えて、杏奈はふっと表情を緩めた。
「うーん、考え中! お盆に田舎のおばあちゃんちに行く以外、今のところ予定は立ててないよ」
そう言って、冷めかけたフライドポテトを口に運ぶ。
すると、悠介の綺麗な瞳がさらに輝いた。