秘密実験【完全版】
杏奈は眠らずに、幽霊のことを考えていた。
目の錯覚だと思い込もうとしたが、本能がそれを否定する。
あれは本物だ……。
霊感のない杏奈にもハッキリと分かるほど、幽霊は“そこ”に存在していた。
問題はあの女の幽霊が何者で、何を伝えようとしていたのかと言うことだった。
連中は、きっと信じてくれないだろう。
扉が開いたとき、杏奈は再び眠りの世界に落ちようとしていた。
しかし、現れた人物を見て眠気が吹き飛ぶ。
「いつまでも寝てんじゃないよ、さっさとコレに着替えなさい!」
おかめ面の女は相変わらず険のある言い方で、手に持っていた服を杏奈に投げつけた。
綿の白いワンピース。
それに、替えの下着もある。
女が鍵を使って、杏奈の手錠を外す。
「あのっ……。これ、あなたの?」
「なわけないでしょ? いいから、さっさと着替えなさいよ」
女は腕を組みながら、戸惑いの表情を浮かべる杏奈を急き立てた。
しかし、汗ばむ肌が気持ち悪い。
「……シャワー浴びていい?」
「ッ……、一分きっかりだからね! 分かった?」
杏奈の申し出に一瞬苛立ちを見せた女だが、冷たくそう言い放った。
きっと、リーダーがシャワーを浴びさせてもいいと言ったのだろう。
「タオル借ります……」
「もう十秒経過したからねッ」
「うそっ、早い……!」
腕時計を見やる女の目の前で、杏奈は羞恥心をかなぐり捨てて裸になった。