秘密実験【完全版】



 ザザッ……


 砂嵐が途切れ、画面に白い部屋が映し出された。


 カメラがズームしていき、柱に縛られた悠介を捕らえる。



「悠介っ……!」


 思わずテレビに近づき、声を上げる。


 全く身動きの取れない状態の彼は、ただ呼吸だけをしているという感じに見えた。


 猿ぐつわを噛まされているから、声すらも出せないのだ。



『ひひひっ。これから授業を始めまーす』


 ピエロ男がカメラ目線で、嬉々とした口調で言う。


 うなだれていた悠介がその言葉に反応して、モゴモゴと何かを喋ろうとする。



『あン? ちゃんと喋れよ、バカ野郎!』


『ぐぐッ……!』


 男に頭を小突かれ、くぐもった声を漏らす悠介。


 その後も、ピエロ男による暴力は続いた。


 殴る、蹴るの繰り返し……。


 一方的な暴力行為に、杏奈は目を背けたくなった。



「もうやめてっ! 聞こえてるんでしょ!?」


『聞こえな~い。……そうだ。餌をやらなきゃ死んじまうな! 俺のペットがよォ』


 ピエロ男はそう言って、袋から何かを取り出した。


 悠介はぐったりとしたまま、肩で荒く呼吸をしている。



『ほれ! パンだ。ありがたく食えや! ……腐りかけだけどな? ヒャハハハッ』


 耳障りな笑い声を立てながら、カビの生えたパンをまるで動物に餌をやるように突き出す。


 猿ぐつわを外された悠介は、一心不乱に口を動かしてパンを食べ始めた。


 殴られすぎて顔面が腫れ、瞼の上あたりから出血している。



「悠介……」


 ヨダレを垂らしながらパンを貪り食う彼の姿に、杏奈はショックのあまり思わず顔を背けた。


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