秘密実験【完全版】
女はご機嫌な様子で、部屋から出て行った。
“収穫”があったからだろう。
杏奈が死ぬほど嫌いな食べ物がピーマンだったという収穫が。
「ううっ……」
口をゆすいでも、まだ苦味が残っているような感じだった。
何だか胃がムカムカして、気分が悪い。
杏奈は床の上にうずくまり、額にうっすらと脂汗を滲ませた。
「ハァ、ハァッ……」
息苦しさを覚えて、喘ぐように呼吸を繰り返す。
杏奈は身体を折り曲げて、腹痛と吐き気に顔を歪めた。
きっと、あのピーマンのせいだろう。
これからもピーマンを食べさせられたら、確実に寿命が縮むわ……。
不安と絶望の中で、杏奈は力なく目を閉じた。
アイスクリーム、ドーナツ、焼き肉、お寿司、カレー……。
好きな食べ物を頭に思い浮かべながら、気を紛らわそうとした。
しかし、胃の中にあるのはピーマン。
杏奈は慌てて起き上がり、バスルームに駆け込んだ。
「うっ……!」
便器の前に膝をついて、胃の中のものを吐き出した。