秘密実験【完全版】
*
モニター画面の隅に映る少女を、男は瞬きすらせずに見つめていた。
ポニーテールをほどいた長い髪に、小花模様のレトロなワンピースを着た少女を……。
──似ている。
男はふと、そう思った。
遠目から見ると、髪型と洋服のせいで“あの人”に瓜二つだった。
「っ……」
男が唇の隙間からわずかに吐息を零した瞬間、勢い良く扉が開いた。
「たっだいまー! ねぇ、聞いてよ真~」
「……」
猫なで声ですり寄ってくる女を無言で睨みつけた。
しかし、当の本人は静かな怒りを発する彼に気づかずに続ける。
「目玉が落ちてたんだよ! 目玉だよ?気持ち悪くなーい?」
「……だ」
「へっ?」
「気持ち悪いのは、お前の声だ!」
珍しく声を荒げた彼に、女──中野未来はビクッと肩を揺らした。
しかし、すぐにヘラヘラと笑い顔に戻る。
「な、何言ってんの? 真……。ちょっとご機嫌斜めな感じ?」
「……」
ガンッ!!
しつこく話し続ける未来に、男は無言でテーブルを叩いた。
そして、椅子から立ち上がると、笑顔を凍りつかせている未来に歩み寄った。
「真……どうしちゃったの?」
「……黙れと言ってるんだ。分からないのか?」
「ぐッ……!」
男が無表情のまま、未来の細い首を両手で絞める。
苦しい……息が出来ない。
でも……
真に殺されるのなら本望かも。
中野未来は苦悶の表情から、フッと力を抜いたような表情になった。
「おいおいッ……何やってんだよ!? 大丈夫か、中野ちゃん!」
扉が開く音がして、海藻のようなパーマの派手な男が慌てて駆け寄ってきた。
額田哲司。
……コイツは、いっつも私たちの邪魔をしようとする。